2008年3月30日日曜日

バベル

バベルの塔の逸話をベースにしていると素直に考えれば、意思の疎通の難しさが主題なんだろう。一丁の銃を軸にそれに関わる言葉も文化も違う3家族4シチュエーションを、時間軸をばらしながら淡々と語っていく…。
構成としては面白いと思うが、観終わってまず頭に浮かぶのは疑問符だけ。広く意味を持たせようとし過ぎて全く無意味になってしまった感じ。残念ながら何の感慨も湧かなかった。巧いんだか失敗してるんだか、判断に苦しむところなんだけど、ショートムービーのオムニバスとして4つの物語を順番に見たほうがすっきりしたような気がする。
結局のところ、言葉や文化の違いなぞ全く関係なく自我がある生き物である以上主観でしかない意思の疎通の難しさを伝えようなんて無茶をするために、その上っ面だけ表現して台詞の間にメッセージを押し込んでしまったところに失敗があったのではないだろうか。「伝えるのが難しいから感じろ!」と言わんばかりの演技が延々と続くのだから、観ているほうがそれなりに受け止めようとしない限り全く意味をなさない。

当時菊池凛子が話題になっていたが、彼女の演技と言うよりは、画面の風合いから他とは違う日本パートの浮き具合が印象に残った。全体的に地に足の着いてない展開なんだけど、(なんちゃってな表現や設定はともかく)日本パートだけじっとりした雰囲気が流れていると思う。これは単に同族だからかもしれないが。

原題BABEL
製作年2006
製作国アメリカ
時間143
監督アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ
脚本ギジェルモ・アリアガ
撮影ロドリゴ・プリエト
出演ブラッド・ピット
ケイト・ブランシェット
ガエル・ガルシア・ベルナル
役所広司
菊地凛子
二階堂智
アドリアナ・バラーザ
エル・ファニング
ネイサン・ギャンブル
ブブケ・アイト・エル・カイド
サイード・タルカーニ
ムスタファ・ラシディ
アブデルカデール・バラ

2008年3月29日土曜日

ザ・シューター/極大射程

原作を読んで観たくなった作品。骨太のストイックな主人公と、そのスナイパーとしての周到さと忍耐強さに惚れてたんだが、やっぱり2時間程度じゃ難しいな。全体の流れとしてはうまくまとまってる感じ。原作とはずれのある時代変換も巧くいってる。脚本が良いんだろう。要所は押さえて原作を壊さず、スピーディに展開する。ただ、良くも悪くも無難になってしまった感が否めない。
じっくりとコトを進める主人公とそうではないFBI捜査官との時間の流れ方が違う二人の対比が物語を、ジリジリさせながら引っ張っていくポイントになってたと思ったのだが、この作品ではさすがに二人を語る時間的余裕がないせいで、ニック側のストーリーがばっさり省かれていて、単なる付属になってしまったのが勿体ない。サラ(K・マーラ)とのロマンスもとりあえず残ったが、あれなら無くても良かった。
ともかく、主題の遠距離射撃の醍醐味が薄れてしまっているのが残念だ。

原題SHOOTER
製作年2007
製作国アメリカ
時間126
監督アントワーン・フークア
原作スティーヴン・ハンター
脚本ジョナサン・レムキン
撮影ピーター・メンジース・Jr
出演マーク・ウォールバーグ
マイケル・ペーニャ
ダニー・グローヴァー
ケイト・マーラ
イライアス・コティーズ
ローナ・ミトラ
ネッド・ビーティ
ラデ・シェルベッジア

2008年3月9日日曜日

戦場のピアニスト

実は『海の上のピアニスト』と間違えて観た(笑)当然冒頭から重い雰囲気で始まったのでびっくり。148分という長丁場ながら大きな盛り上がりもなく、最後まで淡々と進んでいく。でも目が離せない。シュピルマン本人の回想録を基にした話だと、鑑賞後に知って妙に納得した。
戦争を舞台にした映画は沢山あるが、最近は特にリアルな戦闘シーンを目を引く作品が多い中、これだけ、戦争それ自体が他人事のように語られるものは少ないのではないだろうか。いや、もちろん彼にとっては他人事ではないのだけれど、運良く数多くの人たちに助けられながらひたすら災難が過ぎ去るのを待つ姿は、たぶん凄く共感できるだけに、戦争そのものは他人事に映っている気がした。それは単に彼の心情があまり多く語られないからなのかもしれない。原作も割とありのままを淡々と描かれているようだ。ぜひ読んでみたいと思う。

原題THE PIANIST
製作年2002
製作国フランス
ドイツ
ポーランド
イギリス
時間148
監督ロマン・ポランスキー
原作ウワディスワフ・シュピルマン
脚本ロナルド・ハーウッド
ロマン・ポランスキー
撮影パヴェル・エデルマン
出演エイドリアン・ブロディ
トーマス・クレッチマン
エミリア・フォックス
ミハウ・ジェブロフスキー
エド・ストッパード
モーリン・リップマン
フランク・フィンレイ
ジェシカ・ケイト・マイヤー
ジュリア・レイナー
ワーニャ・ミュエス
トーマス・ラヴィンスキー
ヨアヒム・パウル・アスベック
ポペック
ルース・プラット
ロナン・ヴィバート
ヴァレンタイン・ペルカ

2008年3月8日土曜日

エリザベスタウン

非常にコメントするのが難しい。観終わった直後の感想は、「なんとなくほんわりなれたし良かったんじゃない?」。でもコメントを書く段になって「ちょっと待てよ?」と思うわけで。
思い返すとホントに突っ込みどころが満載だった。登場人物たちの設定も、心情も、展開も、かなり無理があるのではないだろうか。でも個々のシーンは割りに良い雰囲気だし、キルステン・ダンストもチャーミングだし、オーランド・ブルームはちょっとアレだけど、古き良きアメリカ的なところも嫌いじゃない。ただ・・・、全体のまとまりというか繋ぎというか、がどうもちぐはぐな感じ。あまり深く考えちゃダメなんだろう。さらっと観てさらっと忘れることをお勧めする。

原題ELIZABETHTOWN
製作年2005
製作国アメリカ
時間123
監督キャメロン・クロウ
脚本キャメロン・クロウ
撮影ジョン・トール
出演オーランド・ブルーム
キルステン・ダンスト
スーザン・サランドン
アレック・ボールドウィン
ブルース・マッギル
ジュディ・グリア
ジェシカ・ビール

2008年3月6日木曜日

ワールド・トレード・センター

あの日、僕は家でチャットをしながら、テレビから流れるあの光景を見た。あまりにも非現実的で、まるで映画のワンシーンを観ているようだったが、あれから6年以上が経ち、同じようにテレビで同じシーンを観ている。
あの時、あの場所で何が起こっていたかは、実際に現場に居合わせた人たちにしかわかならい。やはりこれは限りなく現実に近い“映画”なのだろう。監督が何を考えてこれを撮ったのか知らないが、この作品は良くできていると感じた。悲惨さを強調するわけでもなく、涙を誘うわけでもなく、衝突シーンや崩壊シーンもできるだけ抑えて、憤りや怒り、悲しみではなく、ただひたすら混乱していた様子と「何かしなければ」という強い意志が、極力音を減らすことで凄くよく伝わってきた。
ほとんど最初から最後まで色んな意味で涙を流しながら観ていた。去年、あの場所に行って良かったと、今さらながらに思った。この映画を観終わった今、もう一度訪れたいとも思う。
原題WORLD TRADE CENTER
製作年2006
製作国アメリカ
時間129
監督オリヴァー・ストーン
脚本アンドレア・バーロフ
撮影シーマス・マッガーヴェイ
出演ニコラス・ケイジ
マイケル・ペーニャ
マギー・ギレンホール
マリア・ベロ
スティーヴン・ドーフ
ジェイ・ヘルナンデス

2008年3月5日水曜日

敬愛なるベートーヴェン

いやぁ、特別好きってわけでもないものの、クラシックってやっぱり良いよね。やっぱりクライマックスの交響曲第九番の演奏シーンは、演奏だけでも十分ぞくっとするのに、ベートーヴェンとアンナのカラミが艶かしくって切なくて嬉しくって・・・(笑)
描かれるのが第九の完成辺りから逝くまでの実に短い期間に絞ったことによる濃密な雰囲気の中、エド・ハリスの憑依ぶりはもちろん、ダイアン・クルーガーの狂気と偉大さに惹かれる可憐さが、歪んでるかもしれないけど、良いロマンスをかもし出していて良い感じ。
史実を基にしているかと勘違いしてたけど、アンナは複数の人物をベースにした架空の人物だそうで。ベートーヴェンは僕が持ってるイメージそのままだと感じたからてっきり、実在してたのかと思った。
(劇中では“2時間”と言っていたがどうやら60分前後の)第九を全部聴いてみたいと思った。えぇ、影響されやすいんです(笑)映像的にはさておき、音響的に映画館で観たかったな。
原題COPYING BEETHOVEN
製作年2006
製作国イギリス
ハンガリー
時間104
監督アニエスカ・ホランド
脚本スティーヴン・J・リヴェル
クリストファー・ウィルキンソン
撮影アシュレイ・ロウ
出演エド・ハリス
ダイアン・クルーガー
マシュー・グード
ジョー・アンダーソン
ビル・スチュワート

2008年3月4日火曜日

フリーダム・ライターズ

国際化が進んでいるとはいえ、身近に他国籍の友人がいるわけでもなく、通ってきた学校は総じて平和だった時代に生きてきた僕にとっては、彼らのように14,5歳で「家の外に出たら戦争」などという状態は想像もつかない。が、しかし、そんな歴史的、人種的、社会的背景は抜きに観ても泣けた。途中何度も泣いた(笑)
実話だから、というだけではないと思う。ヒラリー・スワンクはもちろん生徒たちも良かったが、彼らの日記の中から語られる現実の言葉が胸に響いた。もちろん映画には出てこない、大変な毎日の積み重ねが後ろにあるのだろうけど、その配分が絶妙にはまっている。
気分的にツボにはまっただけなのかもしれないが、べた褒めになってしまったけれど、ほんとに良い話を良くできた脚本で必要以上に盛り上げ過ぎず淡々と語られてると思う。

原題FREEDOM WRITERS
製作年2007
製作国アメリカ
時間123
監督リチャード・ラグラヴェネーズ
原作 フリーダム・ライターズ
エリン・グルーウェル
脚本リチャード・ラグラヴェネーズ
撮影ジム・デノールト
出演ヒラリー・スワンク
パトリック・デンプシー
スコット・グレン
イメルダ・スタウントン
マリオ
エイプリル・リー・エルナンデス
ジェイソン・フィン
ハンター・パリッシュ
クリスティン・ヘレラ
ディーンス・ワイアット
ガブリエル・チャバリア
アントニオ・ガルシア
ヴァネッタ・スミス

2008年3月3日月曜日

アポカリプト

メル・ギブソンらしい突っ込みどころ満載の作品。コメントに窮して幾つかの他人のレビューを見て回ったが、(当たり前かもしれないが)どう見るかによって評価が全く異なるし、そのどれにも共感できてしまうような困った映画に仕上がっている。
最初に感じたのは『パッション』の影響からか、彼のキリスト教の考え方をベースにしたと思われる違和感。特に“地獄”という言葉(和訳だしマヤ語?だし、ホントのところはわからないが)が使われることに抵抗を感じた。また、単に前半部分がまどろっこしい。中盤も無駄が多い。後半になってようやくノッてくる。そしてその後半のおっかけっこは前半のダルさが帳消しになるくらい見ごたえがある。それにしてもほんとに2時間超も必要だったのか?沢山あった伏線はどこへ行った?残虐描写も際どいし、マヤ文明にこだわる理由も疑問が残るし、ラストシーンは色んな含みを感じるし。などなど・・・
監督のこだわりや撮影技術、脚本、役者、時代考証、全てにおいて微妙に不安定で落ち着かない、しかし何が変わってもどこかバランスが悪くなってしまうように思えるほど絶妙にはまってる。はっきりいって単純明快でいてまったく意味不明。視点を変えるたびに楽しみ方や批評のポイント、ひいては評価が変わるという不思議な作品になっている、という凄く面白い映画だと思う。でもあまりお勧めはしない。あぁ、何が言いたいのかさっぱりわからない(笑)

原題APOCALYPTO
製作年2006
製作国アメリカ
時間138
監督メル・ギブソン
脚本 メル・ギブソン
ファラド・サフィニア
撮影ディーン・セムラー
出演ルディ・ヤングブラッド
ダリア・エルナンデス
ジョナサン・ブリューワー
ラオール・トゥルヒロ
モリス・バード

2008年3月2日日曜日

親密すぎるうちあけ話

現実にありそうで絶対にありえないような、モテない男とってはつい夢見てしまうような不思議な話。ただ会話が続いていくだけなのに、もだえそうになる官能を感じるのはフランス映画ならでは。登場するたびに変わっていく服装と画面の色合いが、彼女の心理を描写していると言ってしまえばつまらないレビューになってしまうのが、もどかしい。ほどよく隠された彼女の秘密とそのキュートさに、すっかり彼に感情移入してしまって、もっと話を聞きたいと思ってしまう男の純情さ(笑)
結局これはアンナが主人公ではなく、闖入者によって殻をやぶったウィリアムの物語なんだと、ラストシーンで気がついた。

原題CONFIDENCES TROP INTIMES
製作年2004
製作国フランス
時間104
監督パトリス・ルコント
脚本ジェローム・トネール
撮影エドゥアルド・セラ
出演 サンドリーヌ・ボネール
ファブリス・ルキーニ
ミシェル・デュショーソワ
アンヌ・ブロシェ
ジルベール・メルキ

ショコラ

まさにホットチョコレートみたいな映画。
ホットチョコレートってそれ自体凄く美味しいけど、寒くて体が冷えてたり、お腹が減ってたり、厳しい環境にあるときにこそ染み込んでくる気がする。まさにそんな感じで、ある日閉塞している町にやってきた母娘が、閉塞している人々に甘くて温かい“魔法”をかけてくれる、ほっとする作品。紗の掛かった映像も、少し粗めの画像も、舞台になる時代設定も、役者陣も良い感じ。ジョニー・デップが脇に徹してて男前だ(笑)

原題CHOCOLAT
製作年2000
製作国アメリカ
時間121
監督ラッセ・ハルストレム
原作ジョアン・ハリス
脚本ロバート・ネルソン・ジェイコブス
撮影ロジャー・プラット
出演ジュリエット・ビノシュ
ヴィクトワール・ティヴィソル
ジョニー・デップ
アルフレッド・モリナ
ヒュー・オコナー
レナ・オリン
ピーター・ストーメア
ジュディ・デンチ
キャリー=アン・モス
レスリー・キャロン
ジョン・ウッド

2008年3月1日土曜日

ジャンパー

映像活劇ならばこその物語。世界中を“旅”するシーンやジャンプの表現は今の時代の映像技術だからだし、特殊な能力を手に入れた無邪気さからくる強引な展開は現代っ子が主人公だからだろう。イマドキらしい、迫力と勢いを楽しむ映画だと思う。
ストーリー的には矛盾があるし腑に落ちないことも沢山あるが、そんなことは忘れて、今までにはなかった“喧嘩”シーンを楽しんだ。続編が作られてもおかしくない題材とラストなので(テレビシリーズでもOK)、期待せずに待ちたいと思う。
主人公デイヴィッド役のヘイデン・クリステンセンは、どこかで見た顔だと思っていたら『スターウォーズ/EP2&3』のアナキンだったのね。

原題JUMPER
製作年2008
製作国アメリカ
時間88
監督ダグ・リーマン
原作スティーヴン・グールド
脚本デヴィッド・S・ゴイヤー
サイモン・キンバーグ
ジム・ウールス
撮影バリー・ピーターソン
出演ヘイデン・クリステンセン
ジェイミー・ベル
レイチェル・ビルソン
サミュエル・L・ジャクソン
ダイアン・レイン
マイケル・ルーカー
アンナソフィア・ロブ
マックス・シエリオット
トム・ハルス
ジェシー・ジェームズ
クリステン・スチュワート

ホリデイ

ストレートなラブ・ロマンス。キャメロン・ディアス、ケイト・ウィンスレット、ジュード・ロウ、ジャック・ブラックときたら期待せずにはいられないものの、良い意味で裏切られた。それぞれがそれぞれの恋に破れ、また出逢う。ホームエクスチェンジという特異な設定はあるものの、王道がさらりと描かれていて安心して観ていられる。
幾つかの気になる伏線かと思われたイベントが、なんのフォローもなく流れてしまったのが勿体ない気がした。まぁこれ以上サイドストーリーを詰め込んでも、二組の恋愛の盛り上がりがしぼんでしまうのだろう。ちょっと人恋しいときに軽くみると幸せな気分になれるかもしれない。

原題THE HOLIDAY
製作年2006
製作国アメリカ
時間135
監督ナンシー・マイヤーズ
脚本ナンシー・マイヤーズ
撮影ディーン・カンディ
出演 キャメロン・ディアス
ケイト・ウィンスレット
ジュード・ロウ
ジャック・ブラック
イーライ・ウォラック
エドワード・バーンズ
ルーファス・シーウェル
ミフィ・イングルフィールド
エマ・プリチャード
シャニン・ソサモン
サラ・パリッシュ
ビル・メイシー
シェリー・バーマン
キャスリン・ハーン